クレジットローン ―ある主婦の15年―
第4章
35歳。このあたりのことを思い出すと、暗い気持ちになります。あまり考えたくはないのですが、同じことを繰り返さないためにも、ここに書き留めておこうと思います。これを読むみなさんのためというよりも、自分のためということのほうが大きいでしょうか。
一定の務め先のない主婦が夫に内緒で借りられる額には限りがあります。やがて消費者金融のカード1枚では返済が追いつかなくなり、借金を振り分けるために同様のカードの枚数が増えていきました。最終的には、信販系のカード4枚、それから消費者金融のカード4枚で、自転車操業のように借金を返していくという事態を招いてしまったのです。現実から目をそむけ、いきあたりばったりなやり方でしのいできた結果です。いくらなんでも、そんな枚数になる前に何か手を打てただろうと、今なら思いますが、とにかく、誰にも知られずに自分ひとりで対処していこうとしたことが、間違っていたと思います。
けっきょく、借金の総額はおよそ400万円になっていました。月額の支払いが14万円。これも、今振り返るから400万円だとわかるだけで、自分ではいったいいくらの借金なのか、麻痺してしまってほとんど分からなくなっていました。別に贅沢な生活を送っていたわけではありません。買いたいもの、いろんな楽しみを我慢し、生活していくだけで精一杯で、借金の額を減らしていく余裕などまったくありませんでした。
夫には絶対に知られたくはありませんでした。ただでさえ会社は忙しく、見返りのないなかでうっぷんがたまっていた夫は、小さなことでもすぐに腹をたて、声をあらげます。手をあげられることはありませんでしたが、話しかけても無視されたり、舌打ちをされたりして、そのうちに夫がものを置く音、ドアを乱暴にしめる音などに、わたしはびくびくとするようになっていました。夫に知られる前に借金をどうにかしたいという焦りが、さらにどうにもならない状況を招いてしまった。夫の前で平静をよそおっているぶん、子供を叱る回数が増え、話も上の空で聞くようになりました。借金に追われて気持ちがふさぎ、近所のつきあいにあまり顔を出さなくなっていました。
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