■ 借金地獄からの生還
第4章−借金死闘
桃の花が咲いている、まだ枯れ木が目立つゆっくりとした春の始まりを急かしているかの様な桃色の花弁が眩しいほどである。
ここ数週間の休日、若しくは仕事が終わってからの時間は全て、債務整理の準備に費やしてきた。
具体的にいうと、パソコンを購入する金銭的余裕が無い私は、インターネットカフェで債務整理を行った先人達の体験談やアドバイスを読んだり、法律事務所等のホームページで様々な方法を模索したり、又は大型書店で債務整理関係の書籍を購入したりと、思い当たる全ての方法で債務整理に関する知識を充分に吸収した結果、辿り着いた最良の答えが法律家に依頼をする任意整理だった。
では何故私の場合、自己破産、民事再生、特定調停というその他の手段よりも任意整理が最良なのか自分の考えを説明しようと思う。
今はとにかく一日でも早くこの借金地獄から抜け出したい気持ちでいっぱいだが、5年後、10年後、又はそれより先の将来に出来るだけ悪影響を及ぼしたくない、結婚して家を買う時も、車を買う時も、通常の場合、現金での一括払いは殆んど不可能だ。
債務整理をしても年月が過ぎ生活環境が変われば、家や車が欲しくなる。
都合の良い話かもしれないが、それが可能であって合法ならば、自分に都合よく生きたいのは当然の選択で、綺麗事抜きの本音である。
結果将来を捨てたく無いのであれば、自己破産と民事再生は避けた方が無難である。
よく聞く話で、自己破産は10年経てば普通の人と変わらずに融資が受けられる等と言った、何の確証も無い話を聞くことがあるが、それは心無い法律家の商売トークか、無責任な噂であるという結果に至った。
それから民事再生に関しては、自宅を手放したくない人が主に利用する様で、将来的な信用の損失度を考えれば、自己破産と大差は無い。
特定調停は自分の叔父夫婦が先々月行ったので、詳しい話を聞きに行って来たのだが、叔父と叔母の二人とも当初想像していたよりも、結果に大分不満が残ったと口を揃えて言っていた。
具体的には、利息制限法に基づいて金利の再計算をするのだが、金融業者側が今までの取引の履歴情報に関して理由を付けて開示しないらしい。
本来、叔父であれば10年以上の取引が有るので、任意整理をきちんとすれば殆んど残金が無いか、逆に金融業者から返金してもらうはずにも拘らず、今ある元金が半分以上残る結果になってしまい、更にその残金に対し止まると思っていた金利も、利息制限法以内の年利10%を取られる事になったらしい。
叔母の方も取引年数が平均5年で、利息の再計算をすると相当な減額があるはずなのだが、相手の金融業者が取引履歴を2〜3年間分しか提出しないので、思っていたより元金が残り、利息も止まらなかったらしい。
そのうえ、返済回数が36回と短期間になってしまい、結局月々の支払額は、今までと、殆んど変わらない額になってしまったとの事だ。
特定調停は確かに、手続自体の費用の安さを見れば魅力的かもしれないが、本来法律上支払わなくても良い方法がある金銭を、支払わなければならなくなる事を考えれば、あまり得策ではないような気がする。
仮に、特定調停と任意整理の費用の差が20万円あったとしても、支払額の差が100万円あったら、誰でも迷わず任意整理を選ぶだろう。
では、任意整理ならば万全で安心かというと一概にそうでもない。
問題は、何処の誰に依頼するかが一番重要である。
同条件の300万円の借金に関して三人の法律家に任意整理を依頼したとする。
一人目の和解結果は、残元金280万円、利息年利15%、支払回数36回。
二人目の和解結果は、残元金100万円、利息なし、支払回数60回。
三人目の和解結果は、残元金0万円、過払返還金50万円。
これは、多少大袈裟な例の様に感じると思うが、全く持って現実問題である。
私は、無料相談や有料相談を問わず、任意整理を行っている、12件の弁護士事務所と司法書士事務所へ直接相談しに行った結果での独断と偏見での奇麗事抜きの現実的判断を述べさせてもらう。
先ず、初回相談料に関して弁護士は通常60分間で10000円掛かったのに対し、司法書士は殆んどが無料相談で対応していた。
着手金と成功報酬に関しては個々様々だが、全体的に見ると費用の合計金額が弁護士の方が高額で、司法書士の費用に比較して1.5倍から2倍ぐらいの金額を提示された。
相談の内容や、任意整理の方法等は殆んど変わらない様に思えたのだが、士業種特有の資格の差なのかもしれない。
優柔不断な私なりにいろいろ思考検討して、ある一人の先生のもとに再び足を運んだ。
選択理由は、費用が安かった事。3時間半にも及ぶ長時間を掛けて多種多様な方法とパターンを素人の私にも充分理解出来る様に親切丁寧に説明してくれ選択させてくれた事。そして何より話し易かった事。
その日、依頼書、委任状等に署名捺印をし、私の任意整理は始まった。
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